琉球大学医学部附属病院 歯科口腔外科 は沖縄県内唯一の日本口腔外科学会認定研修施設です。

口唇口蓋裂

「口唇口蓋裂児の健やかな笑顔を目指して」
 
 
・はじめに
琉球大学医学部附属病院口唇口蓋裂センターでは、口唇口蓋裂の患者さんが抱えるさまざまな問題(哺乳、口唇・外鼻の形態、ことば、咬み合わせ)について各専門医が協力して一貫した治療を行っています。現在は、口唇裂・口蓋裂は適切な治療を受ければ形態的にも機能的にも良い結果が得られるようになっています。私たちはご家族の皆様と力を合わせて治療を行って行き、心身ともに健全なお子様に育つように願っております。
本ホームページは、口唇口蓋裂を持つお子様のご家族に病気のことを正しく理解して頂き、いろいろな問題についてどのように対処したら良いかを、私たちと一緒に考えて頂くために作成しました。お子様が、これから、どの時期にどのような治療を行うかをまとめています。折りにふれてご覧頂き、その時々の治療内容や注意点を理解していただければ幸いです。
尚、不明な点や相談等ありましたら、力のおよぶ限りお役に立ちたいと思っておりますので、ご気軽にお声を掛けてください。
 
琉球大学医学部附属病院口唇口蓋裂センター
センター長 新崎 章
副センター長 西原一秀
 
 
・琉球大学医学部附属病院口唇口蓋裂センターの診療の特徴
琉球大学附属病院歯科口腔外科における口唇口蓋裂治療は1990年代から開始され、日本でも代表的な口唇口蓋裂専門医療機関として発展してきました。これまで、約1250名の患者の治療を行い、沖縄県では有数の治療機関として治療を行ってきましたが、平成2006年には院内耳鼻咽喉科、小児科、看護部、言語聴覚士などの関連各科の連携を図るために「琉球大学医学部附属病院口唇口蓋裂センター」が設立され、高度な知識と医療技術を有する専門家が集まった医療機関として口唇口蓋裂患者にチームアプローチによる一貫治療を実践しています。近年では、出生前に告知を受けた家族のサポートならびに出生直後の患児の早期哺乳管理ならびに家族支援のために県内の往診事業も行っています。さらに、口唇口蓋裂治療の適切な医療情報ならびに家族への心理的サポートを行う目的で、平成26年には「沖縄県口唇口蓋裂を考える会」の親の会を発足させ、その活動を進めています。このような活動は沖縄県、国内はもとより海外に広がり、ラオスやエチオピアなどのアジア・アフリカの発展途上国における口唇口蓋裂医療援助活動で無償手術ならびに医療技術移転を行い、国際的な口唇口蓋裂医療水準の向上に努めています。
 
 
・琉球大学医学部附属病院口唇口蓋裂センターにおける口唇口蓋裂一貫治療

1.        口唇口蓋裂とは

生まれながらに唇が開いている状態を「口唇裂」といいます。また、口と鼻との間をさえぎっている口の天井部分を口蓋と呼び、ここが生まれつき開いている状態を「口蓋裂」といいます。  
口唇裂は、裂の場所や程度によってさまざまな種類があります。裂が小さく溝状になっているものや、部分的に開いているもの、唇と歯ぐき(歯槽骨)が割れているもの、唇から鼻まで完全に割れているものなどがあります。また、唇の裂は片方だけのもの(片側性)と左右両方のもの(両側性)があります。口蓋裂は、口唇裂を伴って口蓋の全体が裂けているものから(硬軟口蓋裂)、口蓋の後方のみが裂けているもの(軟口蓋裂)まで程度はさまざまです。
 
 
                    口唇裂     唇顎口蓋裂                     硬軟口蓋裂  唇顎口蓋裂
                 両側性唇顎裂  両側性唇顎口蓋裂                   粘膜下口蓋裂
  
 

2.        病気の成り立ちについて

わが国の口唇口蓋裂の子供さんは、およそ500-600人に1人の割合で生まれてくると言われています。沖縄県では年間17,209名(2013年)の赤ちゃんが出生していますので、その割合から年間30名程度の患者さんが生まれていることになります。
赤ちゃんの口唇と口蓋は妊娠の初期(5週目〜10週目くらい)に出来上がりますが、なんらかの原因で唇の癒合が障害されると口唇裂が生じます。同様に、口蓋裂は左右の突起の癒合が真ん中で妨げられると生じると言われています。口唇裂・口蓋裂の発生原因はいろいろと研究されています。母体の妊娠初期の状態や薬剤、放射線の照射などいろいろな環境的因子、遺伝的要因が考えられていますが、発生原因はまだ明確には分かっていません。
 
 
 
(宮崎正:口腔外科学、先天異常および後天異常、医歯薬出版、東京、2003より)
 
  

3.     口唇口蓋裂の患者さんが抱える問題

口は「命の入口、心の出口(西日本新聞社「食くらし」取材班)」と言われ、「食べる」、「話す」、「表情をあらわす」、「呼吸する」など多くの働きをします。口唇裂・口蓋裂の患者さんは、これらの働きに問題を生じることがありますが、それらの問題はこれからの治療で解決できます。
 
1) 哺乳
口蓋裂児は、吸う力や咬む力が弱いために、ミルクを飲む時間が長くかかることがあります。
 
2) 咀嚼
口唇口蓋裂児では、歯並びが悪いことで、うまく噛めないことあります。
 
3) ことば(言語)
口蓋裂児は、軟口蓋と咽頭の間を閉鎖するはたらき(鼻咽腔閉鎖機能)がうまくいかず、鼻からの息もれによってことばの問題が生ずることがあります。また鼻咽腔閉鎖機能が良好でも口蓋裂児特有の発音の問題(構音障害)が現れる場合があります。
 
4)  歯数・歯質・歯列
口唇口蓋裂児の顎裂側では歯が欠損したり、歯質が十分に形成されなかったりすることで、上顎の歯並びが悪くなることがあります。
 
5) 顎・顔面の発育
口蓋裂児は顎や顔面の発育が小さくなりがちです。また手術の影響で上顎の発育に影響を及ぼすことがあります。
 
6) かぜ・中耳炎
口唇口蓋裂児は、かぜにかかりやすいようです。ただし肺炎など重症になることはあまりありません。また口蓋裂児は滲出性中耳炎にかかりやすいです。
 
7) 合併症
口唇口蓋裂児の約20%は、他の病気を合わせ持っていることがあります。1か月検診、3か月検診で身体の他の部位に異常が指摘された場合は、専門医師に診察して頂きます。
 
 
 
 

4. 琉球大学医学部附属病院口唇口蓋裂センターの治療

 
【琉球大学医学部附属病院口唇口蓋裂センターの口唇口蓋裂一貫治療のスケジュール】

 
 
口唇口蓋裂の患者さんは、いろいろな問題が見られることがあります。問題を一つずつ解決し、子供さんの健やかな成長発達のために、総合的な観点から口唇口蓋裂治療を行うことが良いと云われています。口唇口蓋裂の治療期間は短くありませんが、口唇口蓋裂による問題は必ず解決していきますので、焦らないでください.
なお、口唇口蓋裂の治療に関わる入院手術や矯正治療の費用については、18歳の誕生日まで自立支援医療制度(旧 育成医療制度)が適用されます。
 
1) 出生前診断に対するコンサルト
最近は、超音波検査の進歩で胎児の描出能が向上し、胎内で口唇裂がみつかることも少なくありません。超音波検査は、胎児の疾患を正確に診断できるメリットもありますが、見つけるつもりがなくても胎児の口唇裂を発見してしまうこともあります。
当センターでは、出生前診断で口唇裂の可能性がある場合は、ご家族の皆様に口唇口蓋裂の概要や治療の流れなどを説明し、正確な情報を伝えて不安が少しでも取り除けるようにと考えています。出生後は直ちに往診で患児ならびにご家族のサポートを行っています。
 


2) 哺乳床(Hotz(ホッツ)床)による哺乳改善とNAM(nasoalveolar mording)plateによる術前顎裂外鼻形態の矯正
口蓋裂児は、口蓋の器質的欠損によって陰圧形成が困難で、乳首圧迫圧も効果的に作用しないため、哺乳が上手にできないことがあります。但し、嚥下運動に問題があることはほとんどないので、口の中にミルクを上手く入れてあげると哺乳ができます。
そこで、当センターでは口蓋裂児は出生直後からスイス・Zurich大学のMargaret Hotzらによって考案された哺乳床・Hotz床を口腔内に装着して哺乳の改善を図っています。また、Hotz床は哺乳改善効果以外にも1)舌位の安定、2)鼻腔粘膜の褥瘡性潰瘍の防止、3)歯槽弓形態の誘導・改善、4)乳首の圧迫圧の上昇、などに有用です。


 
 
最近はHotz床にnasal stentを付与したNAM(nasoalveolar mording)plateを使用し、口唇形成術前まで顎ならびに外鼻形態を改善しています。

 
  
3) 口唇裂の手術(口唇形成術)
 生後すぐの赤ちゃんは体も唇も小さいため、安全かつ確実に手術を行うために少し発育を待って手術を行います。また、Hotz床やNAM plate装着による顎裂幅の縮小や外鼻変形の改善などの効果も期待できます。口唇形成術は、片側性唇裂では生後3〜4か月、体重6.0?を目安に手術を行っています。両側性唇裂では、正中の中間唇の発育が良い場合は生後3〜4か月頃に両側を同時に手術(一回法)し、中間唇の発育が悪い場合は手術を2回に分け(二回法)、1回目を生後3〜4か月頃に、2回目を1回目の術後3か月頃の生後6〜7か月頃に行っています。口唇形成術は口唇を閉じるだけでなく、口唇の筋肉を繋いで立て直し、自然に近い口唇の形態と機能を再建することを目的とし ています。
子供さんによって裂の幅や変形の程度は異なりますので、手術前の診察で最も適切な手術時期や方法を決定しています。手術後は白唇部の創の保護目的で口唇テープを貼り、抜糸は1週間後に行っています。白唇の創は、術後数か月間は赤みを帯びたり、硬くなったりしますが、いずれ落ちついてきます。また、瘢痕防止の薬の服用やテープ交換を自宅で行って頂き、同時に鼻孔の形が整うように、術後はリテーナーと呼ばれるシリコン製の鼻栓を装着します。
 
「初診時から口唇形成術までの期間」
初診から口唇形成術までは、約1か月に1-2回程度の割合で発育状態や唇や口腔内の診察を行います。Hotz床やNAM plateを使用する場合は調整や管理のために通院回数は増えます。ご自宅では赤ちゃんの体重、哺乳量などを把握して下さい。口唇口蓋裂児は、心臓やその他の疾患を合併することがあります。合併疾患によっては、その治療を優先しなければならないこともあります。
手術は全身麻酔下で行います。入院に必要な期間は約10日間程度です。入院はお母さんに付添っていただく必要があります。
 



 

4) 口蓋裂の手術(口蓋形成術)
口蓋形成術は、口蓋の破裂部分を閉鎖して、正常な言語機能の獲得を目的としています。当センターでは、ことばを完全に覚える前で顎発育がある程度進んだ通常1歳6か月頃に手術を行っています。その時期は口蓋裂形成術の最適な時期と云われています。

口蓋形成術は、単に口蓋の破裂部分を閉鎖するだけではなく、発音時に空気が鼻から漏れないように、口蓋の組織を後方に移動して咽頭部分を狭くし、口蓋の筋肉を正しい位置に修正して筋肉が良好に運動できるようにしています。そのためには、十分に長く、しなやかな軟口蓋を作ることが重要ですが、同時に、口蓋前方部に出来た創部は顎の発育を障害することが知られています。われわれは、手術の時に口蓋の表面に、骨膜と呼ばれる薄い組織を温存して、侵襲の少ない手術を心がけています.
図6 口蓋裂の手術(プッシュバック法)
手術直後は、口蓋を保護するためにプラスチック製のプレートを付けます。1週間してプレートをはずした直後は流動食をスプーンで流しこむようにして与えてください。手術後2週間は、流動食のほかにごく軟らかい固形物を少しずつ与えても良いですが、ビスケットなどの粉が傷口に残るような食べ物は避けてください。手術後1か月たてば、普通の食事も歯みがきも可能となります。なお、手術直後     
は傷が硬く、また筋肉の動きが悪くなるため、一時的に食物が鼻からもれることがあります。時間がたてば、軟口蓋の動きが良くなるのと同時にこの鼻もれも少なくなります。また、まれに手術した口蓋の一部に孔があくことがありますが、小さい孔ならば発音には影響せず、上あごの成長とともに自然に閉じていきます。
口蓋裂治療では、その後のことばの治療がとても大切です。ことばの訓練はおおむね術後1か月から開始します。それまでは自宅で訓練することは控えてください。
 
「初診時から口蓋形成術までの期間」
手術は全身麻酔下でおこないます。入院に必要な期間は2週間程度です。入院にはお母さんに付添っていただく必要があります。手術までは、定期的な診察をおこないます。また、口蓋裂の子供さんは中耳炎になりやすいので、耳が汚れやすいなどの前触れがある場合は、耳鼻科で診察していただきます。
 
 
【その後の治療は随時更新していきます。】

このページのTOPへ